クリスマスの光

聖書 ミカ書 5章1〜3節 ルカによる福音書 2章1〜20節

 

 コロナ禍でも、忙しくても、親しい友人や恩師、家族を亡くしても、苦しい中でも、私たちは、私たちにできるクリスマスを守ってきました。これまでも心に残るクリスマスがあったと思いますし、イエス・キリストについての福音、また神の愛についてのメッセージに触れる機会が与えられてきたと思います。

手元に『クリスマス セラピー』という本があります。自己肯定に導く助言を記したもので、微笑ましいエルフのイラストが人間の日常を映します。キリスト教精神から生まれた小さな冊子のシリーズです。次の一節があります。

「働き過ぎて目が回るときには、心の中で、きよしこの夜の情景を思い浮かべましょう。

 必要になるたびにそこへ立ち戻る決心をしましょう。」

 (著者:カレン・カタフィアツ、日本語訳:目黒摩天雄、原文:“find, the slent night in your heart”)

 

 この本には、クリスマスの商業主義に振り回される必要はないとか、クリスマスカードに描かれるような非の打ちどころのない祝賀会を催すのはやめましょうなどという提言があります。なるほど、私たちが心の中に見るべきクリスマスとは、あの、簡素な馬小屋で祝われたクリスマスの夜であるべきです。その夜、一体、何が起こったのでしょうか?

 ルカ福音書に、その夜の出来事は詳しく記されます。ローマ皇帝の勅令により行われた人口調査によって、イエス・キリストは、お腹の中にいる時にベツレヘムに移動しました。絶対権力をもった皇帝の命令で人々が動くことは、仕方がないことだと思われます。そうではありますが、やはり、その時代の困難さが確かにありました。ヨセフと身重のマリアは、ヨセフの故郷ベツレヘムへ移動します。神の聖なる霊によって身ごもり、男の子を産むと言われたマリアは、お告げを受けた時に「おとめ」でした。人に知られてはならず、婚約は密かに解消されようとしていました。しかしマリアもヨセフも、この出来事を受け入れました。日常の中に突如訪れた、大きな恵み、計り知ることのできない神のご計画であったのです。

 旅先のベツレヘムでは、客間を見つけることができませんでした。宿に泊まれなかったことは、人々の間に苦しみ、喘ぎがあること、生きることそのものの困難さを示しています。人々の無理解についても示唆されています。そのような民衆の中からも賛美する者たちが現れることを、宗教的な視点から語る物語となっています。ルカ福音書では、人々は神に感謝をささげる者、「主を賛美せよ」との呼び声に応える者へと変えられるというメッセージがあります。

 名も伝えられていない家人の家畜小屋で、マリアとヨセフは休み、ついに幼児が生まれました。飼い葉桶の中に御子イエス・キリストは寝かされました。天使のお告げを受けた羊飼いたちが会いにきます。2章11節、天使が羊飼いたちに現れた場面で、生まれた子が「主メシアである」と告げられました。聖書で用いられたヘブライ語の、神に選ばれた人の称号「メシア」。そのギリシャ語訳が「キリスト」です。主によって遣わされた王、また祭司、指導者となる人物の意味があります。なお救い主であるメシア=キリスト・イエスは主と同等の権威を持つお方です。

私たちは、いと高き方、神の子イエス・キリストが、日常に突如として現れてくださったこと、それゆえに大きな恵みが一人ひとりにあったことを示されています。マリアは幼児イエスを見つめ、周囲の者たち、羊飼いたちにも告げられた良き知らせ、聖書の預言と、神のご計画を思い巡らしました。

 羊飼いたちは、自分たちの見聞きしたことを町の人に伝えるために立ち去りました。この後、神殿では、メシアを待ち望んでいた老シメオンとアンナという二人の人が賛美をささげることになります。これらの物語から、イエス・キリストは人々の間に生まれたという印象が与えられます。

 その時代の人々も、現代の私たちも、それぞれの人生を歩んでいます。信仰を持つ人も、持たない人も、正しい人も、社会の共同体から外れてしまった人も、罪人と呼ばれる人もいます。マリアとヨセフのカップルは本当に大変だったと思います。しかし何とか社会で過ごしています。神殿詣のささげものの内容から、決して裕福ではなかったと思われます。しかしマリアはしっかり人生を歩んでいますし、ヨセフも一緒でした。

 なお二人だけで、どうして馬小屋で生まれたばかりの子どもが無事に過ごせたのか考えます。マリアは亜麻布で子どもを包みました。ヨセフが面倒を見ることのできる人だったか、周りにケアする人がいたのでしょう。

私たちの人生は続きます。その私たちを救うのは、御子イエスです。おめでとう。おめでとうございます。私たちは言いましょう。「主を賛美せよ!」

                           (12月24日(日)聖夜賛美礼拝 牧師 片岡宝子)

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あかしびと
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