これらの言葉から伝わる神の愛
聖書 創世記 21章9~21節 ローマの信徒への手紙9章19〜28節
2013年にユースミッションというイベントに参加しました。アメリカのテキサス州にある小さな教会の青年たちとの交わりです。ちょうど今日のように日本では平和聖日の時期、礼拝に参加し、私は青年のリーダーとして挨拶をすることになりました。敗戦国の日本人です。初めて感じた緊張感でした。
その前に中国の教会を訪問し、神学生や神学教授たちと交わる機会がありました。非常に苦労した世代の教会の人たちが迎えてくださって、言葉が交わされ、なんと霊的に温かな場だろうと思いました。
中国の教会でも緊張感がありましたが、アメリカでは少し違い、「私は何を語ればいいのだろう」という迷いがありました。私が語れることは、牧師として聖書の福音を語ること。それしかない。それが最大限、私にできることだ。そのような確信を持ちました。
私たちは神と御子キリストによって永遠の命を与えられた存在であることを福音によって伝えられています。この福音に立つ時、私たちは勇気を与えられます。様々な立場の違いがあります。緊張関係があったり、掛ける言葉が見つからなかったり。一方で優しさに感謝したり、涙したり。私たちには、人生の途上で与えられるものがあります。その時々に、その節目に、福音によって互いを受け入れ、福音によって自由に語り合うことができます。そのような機会がもっと与えられればと願っています。
アメリカにも様々な立場の人たちがいます。私はテキサスでホームレス支援の活動にも参加しました。教会を会場をした食事配膳の日、ある人から「(地震のあった)あなたたちの国のことはニュースで聞きました。祈っています」と声を掛けてもらいました。そこには若い方もいました。移民の方もいたと思われます。私たちは世界にいる兄弟姉妹と繋がることができます。ローマの信徒への手紙にありますように「互いを受け入れなさい」との教えを実践することができます。
人生は色々です。立場が逆転することがあります。今日の旧約聖書は、サラとハガルの物語、サラがハガルを「追いやる」物語です。私は、福島裕子先生の『ヒロインたちの聖書ものがたり』という本によってこの箇所について深く学びました。サラとハガルの立場が丁寧に説明され、二人の立場がそれぞれ逆転しているのだと語られます。最初の逆転はアプラハムとの間に子が産まれないサラに対して、エジブト出身の女奴隷ハガルがイシュマエルを産んだ後に強く出るようになったこと。自分の方が上だという態度を見せたことです。サラは屈辱を知り、ハガルと接する度に苦しみが与えられました。続く逆転は、イサクを産んだ女主人サラの願いによって、ハガルが家から追い出されたことです。
ハガルとイシュマエルのその後の苦しみを思うと、涙せずにはいられません。実際、私は早朝礼拝で、創世記 21章9~21節を読んで泣いてしまいました。現代に通じる物語だからです。苦しむ者の叫びを神は聞いてくださる。その訴えを、赤ん坊の泣き声を、神は聞いてくださいました。神は奴隷たちの叫ぶ声をお聞きになられます。私たちは逆転した者たちの救い、その救いの約束を与えられた物語を聞いています。
ローマの信徒への手紙9章も読みました。ここにも教会の中のある種の逆転が前提とされたメッセージがあります。具体的に覚えられているのはユダヤ人キリスト者と異邦人キリスト者の関係です。「神は私たちを憐れみの器として、ユダヤ人からだけではなく異邦人の中からも召し出してくださいました。」(24節)その前に「怒りの器」という言葉が置かれ、対比されています。神より怒りを向けられていた、死ぬべき存在であった私たちは、民族や社会的な区別によるのではなく、全ての者が憐れみの器としてキリストの救いを語る者となり、救いに生きる者となったということです。
先月、青年大会の実行委員会に出席しまして、食事会で聖書講義をした時、このローマ書に書かれた神の愛を突然思い出しました。ある牧師が「パウロ硬いよね」という事を冗談に言ったからです。しかし、ローマの信徒への手紙は愛に満ちています。このパウロの愛、神の愛を私たちが受け留めなかったら、神に招かれた全ての人たちに向き合い接することができるでしょうか。この愛をもって私たちはそれぞれの苦しみを知り、それぞれの慰めを祈り合います。実は世界中の人たちと慰め合いができるのです。キリストに与えられる平和の下に、神の愛の下にそれを行いたいと思います。
(聖霊降臨節第9主日礼拝 8月3日 牧師 片岡宝子)
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